感想「愛着障害〜子ども時代を引きずる人々」
雨が続くので読書が捗るよ。
今回読み終わった本は、
岡田尊司 著
「愛着障害~子ども時代を引きずる人々」
(光文社新書)
この本は、愛着障害が何か、
どう人生に影響していくか、
どのように対処しよりよい人生を送るか、
をわかりやすく先人の例をあげて解説しているよ。
生後一歳半ごろまでに形成される、主たる保護者との愛着関係は、その後の人生において、人間関係の構築の仕方、人との接し方そのものに多大な影響を与える。
この時期に安心して親と過ごし安定した愛情を受けることで、根本的な、人への信頼感(エリクソンのいうソーシャル・リファレンシング)が育つのだけど、親自身が何かしらの問題を抱えていたり、引き離されたりすることでその信頼感に傷を受ける、それが愛着障害。
夏目漱石や太宰治、ヘミングウェイやルソー、そしてエリクソンなど、文学や思想、教育などの各分野で功績をあげた人々も、実は親に捨てられたり、問題ある親に養育されたりと親との関係にいろんな問題を抱え、人間として葛藤や欠落感に喘ぎながら人生を開拓していたという。
この「親との関係に問題がある」というのは、世間でも非常に普遍的にみられるもので、つまり誰もが多かれ少なかれ悩むことであり、それを克服するのには友人や家族、特に伴侶との関係が非常に重要になってくる。
この本は伴侶との関係に非常に重きを置いていて、そこが素晴らしいと思う。
親との問題、というと「毒になる親」(スーザン・フォワード)がすぐに思い浮かぶけれど、どうも毒親というセンセーショナルなワードばかりが世間に浸透してしまって、親が問題、親の問題、として原因のみがクローズアップされすぎ、大事な「子どもがどうこの先の人生を切り拓くか」という課題が切り捨てられがちな印象を受ける。
(実際の「毒になる親」にはそのステップも丁寧に解説されているのだけれど、そこはあまり取り上げられない)
その点この本では、愛着障害(=人間関係を構築するための、根本的な世界への信頼感に受けた傷)を持った人々がお互いに、もしくは誰か精神的に安定した人の愛情を受けてその傷を回復し満たされた人生を送ったり、あるいは、別の手段で昇華していくさまを解説してくれるので、非常に未来志向で読んでいても希望が持てる。
親と対決したり、関係を改善しようと「親」に拘泥するのではなく、共に生きる相手とどのようにして傷を克服し、一緒に、より幸せに生きていくか。それが本当の解決法だと教えてくれる。
私自身、人付き合いがとっても苦手なので、一時期自分は発達障害ではないかと思い悩み、関連の本を何冊か読んだけれど、一部納得できる部分もあるがどうもしっくりこなかった。
この本を読んでまさにこれだ!と思った。
実際、発達障害と愛着障害と混同されやすく、また発達障害じたい愛着障害を生みやすいがために、発達障害そのものに注目されて生きにくさを解消することが難しいと本書にもあるけれど、まさにその通りだと思う。
自分自身を正しく知ることは、より幸せに生きるための第一歩だ。
それにより、抱えている問題の本質を捉え、対処していく。少しずつ、良い方向へ、自分の望むような方向へと進んでいく。
それは愛着障害を抱えていても可能なのだと、実際先人たちもそうやって生きていったんだと知り、自分の抱える傷に対処する勇気と希望を持てる、とても良い内容だった。
愛着に傷を受けた子どものひとりとして自らを理解し、同時にいま子を育てている親としてどうあるべきか、何をすべきかを省みさせてくれる良書でもある。
わたしには、奇跡的に心通じ合えた夫のふーがいる。
彼を支え、また支えられながら、子どもたちが心健やかに育ち、外の世界へ出ていけるように手を尽くそう。
今日の一枚はこれ。
雨ばっかりだからほんとにあまがえるが多い。
色あせてきた紫陽花に、二匹のちびあまがえる。